Night Walker

血に飢えた緋き獣

夜も幾分かふけ、辺りには人っ子一人いない夜。

繁華街から路地に入ると、そこはガラリと雰囲気を変えた住宅が建ち並ぶ、住宅街となる。

何ともアンバランスな風景。

その裏路地を、これまた不釣り合いな男が、足早に歩みを進めていた。

街灯の無い路地を、黒いスーツに同色のコートを羽織った白髪の男。

歳は、25、6歳位だろうか。

紙の様な白い顔に、紅を引いた様な紅い唇。

人並み外れた美貌。

美男子と言う言葉で表すのが陳腐に思えるこの男の美貌が、夜の闇に映える。

颯爽と住宅街を抜け、歩みを進める彼。

そんな彼の歩みが止まった。


「公園……か……突っ切る方が早い。が……だ」


闇に溶けるこの道の先、怖い訳ではないが、彼の心の琴線に触れる何かがあり、警鐘を打ち鳴らす。


――入らぬ方が身のためだ――


本能でピリピリとした空気を感じ取って、かなり遠回りになる道を選び、再び歩み始める。

こんな深夜過ぎの時間迄、遊びに付き合わせた友人を呪いつつ、溜め息を付く。

公園を行けば5分程で着く行程も、突っ切らずに迂回すれば、帰宅に35分はかかる。

その差30分。

それ程の差が出来る程に大きな公園は、緑と池と遊歩道が有る昼間は家族連れで賑わう公園だった。

街灯の明かりの消えた深夜の公園ほど、不気味極まりないものも無いと思う。

普通なら。

だがこの男、普通の人間とは少し毛色が違っていた。


『やっぱり、面倒臭い』


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