Night Walker
津那魅の目前に飛び降りて来た男が、長く伸ばした鋭利に尖る爪の有る腕を、横殴りに振り回すと、津那魅はその攻撃を予測していたのか、女を抱えたまま身を低くして男の攻撃をかわす
。
しやがんだまま、右腕を男に向けて指先をバチンと弾くと、男の目の前で小さな爆発と炎が巻き上がった。
津那魅はその機に乗じて、男は炎を避ける為に、互いに遠ざかる様に跳び退って対峙する。
津那魅は、女性を抱えたままゆっくりと体勢を立て直した。
「ふぅん……やるな……」
「おや? 舐められてましたかね。私」
お互いが、張り詰めた糸を引き合う様に、ギリギリの緊張の中一歩も動かない。
その中で男が息を吐き、緊張の糸を解いた。
「今回は諦めよう。我が花嫁は暫し貴様に預ける。貴様の事を調べて、彼女を再び貰い請けに来る。それまで我が花嫁を、精々守るがいい。」
「諦め無いわけだ……」
津那魅の呆れた呟きに、男は
「愚問だな」
と答えると、コートを翻し津那魅の前から忽然と消えていなくなった。
男の見事な逃走ぶりに、津那魅はようやく緊張の糸を解くと、
「はぁ……」
と息を吐いた。
男の姿が無くなると同時に結界も消え失せて、津那魅は街灯の下にあるベンチに、女性を降ろした。
彼女の姿を一通り観察して、溜め息を付く。
『目立った外傷は、首の噛み傷だけか……』
彼女の首があらわになるように傾けさせて、慎重に噛み傷を見る。
首からの毒が回っているのか荒い息を吐き、苦しそうにしていた。
『まだ子供じゃないか……』
津那魅がそう思うのも、仕方の無い事だった。
艶のある真っ直ぐな黒髪は、漆黒と呼ぶに相応しい黒。
肌は雪の様に白く唇は桃色に色付き小さく開いていた。
一言で言うと可憐。
女と子供の中間に位置する少女だった。
「完全に毒が回った訳でもなさそうだな……色気、皆無だし」
津那魅はもう一度少女を見下ろす。
彼女が荒い息を吐きながら、薄く目を開けた。
彼女の瞳に、津那魅の人並み外れた美貌が写り込む。
だがそれは、鏡の様に写すだけで何の反応も示さなかった。
。
しやがんだまま、右腕を男に向けて指先をバチンと弾くと、男の目の前で小さな爆発と炎が巻き上がった。
津那魅はその機に乗じて、男は炎を避ける為に、互いに遠ざかる様に跳び退って対峙する。
津那魅は、女性を抱えたままゆっくりと体勢を立て直した。
「ふぅん……やるな……」
「おや? 舐められてましたかね。私」
お互いが、張り詰めた糸を引き合う様に、ギリギリの緊張の中一歩も動かない。
その中で男が息を吐き、緊張の糸を解いた。
「今回は諦めよう。我が花嫁は暫し貴様に預ける。貴様の事を調べて、彼女を再び貰い請けに来る。それまで我が花嫁を、精々守るがいい。」
「諦め無いわけだ……」
津那魅の呆れた呟きに、男は
「愚問だな」
と答えると、コートを翻し津那魅の前から忽然と消えていなくなった。
男の見事な逃走ぶりに、津那魅はようやく緊張の糸を解くと、
「はぁ……」
と息を吐いた。
男の姿が無くなると同時に結界も消え失せて、津那魅は街灯の下にあるベンチに、女性を降ろした。
彼女の姿を一通り観察して、溜め息を付く。
『目立った外傷は、首の噛み傷だけか……』
彼女の首があらわになるように傾けさせて、慎重に噛み傷を見る。
首からの毒が回っているのか荒い息を吐き、苦しそうにしていた。
『まだ子供じゃないか……』
津那魅がそう思うのも、仕方の無い事だった。
艶のある真っ直ぐな黒髪は、漆黒と呼ぶに相応しい黒。
肌は雪の様に白く唇は桃色に色付き小さく開いていた。
一言で言うと可憐。
女と子供の中間に位置する少女だった。
「完全に毒が回った訳でもなさそうだな……色気、皆無だし」
津那魅はもう一度少女を見下ろす。
彼女が荒い息を吐きながら、薄く目を開けた。
彼女の瞳に、津那魅の人並み外れた美貌が写り込む。
だがそれは、鏡の様に写すだけで何の反応も示さなかった。