DELERTER
3羽の烏
「DELERTER」というサイトがある――…


そこにはただポツンと「記帳」という名のコンテンツが置いてあるだけ。
クリックすると、「password」の文字。
扉を開く鍵は一つ…


「good-by my lover」

パスを解除すると、そこには質素なメールフォームが現われる。

警察、政治家、弁護士、検事、医者、市議会議員…
数多の職業選択欄と、その下にはDELERT――要は抹消して欲しい人間の名前を記入する。

愛する物を亡くした苦しみ、一生消えることのない悲しみを抱える人が、涙をはらりはらりと流しながら、自分達の代りにDELERTER――消去人に抹消依頼を出すのだ。


DELERTERは多くの依頼の中から、指名数がより多く上がった人間を主に削除対象とし、

依頼が成された暁には、切り取った首を公衆の面前に、罪状と共に曝すのだ…


国家公務員を中心として行われる残虐な殺戮行為は、今や社会問題になりつつある…




「…で、あるからしてこの時代は…」

社会科の時間…涼は机に足を投げ出して大口であくびを一つ噛ます。

咄嗟に口から出た「あふぁ…」という間抜けな声にクラスが静まり返ったが、少しガンを飛ばしてやれば、教師は何もなかったかの様に慌てて黒板へと顔を背けた。



金髪に脱色し、それを威嚇する様に尖らせた髪も、薄い眉も、着崩し過ぎた制服も…

全ては他の人間を自分から遠ざけるためだ。


相棒の粋だって長めの黒髪で眼前を隠す様にしていて、話し方も口をあまり開かずにボソボソと話し、陰険な人間を演じている。

粋は学年上位の根暗な勤勉家。

涼は万年テストを白紙で提出する典型的な不良。

見た目も何もかもが真逆な彼らを、誰があの凶悪な殺人鬼だと思うだろう?


――元々生きている世界が違うのだ。

ここにいる幸せに生きて来た人間達と、地獄を這って来た自分達とでは…


♪♪♪♪~


けたたましいロックが爆音で響いた。

それは涼の携帯からで、涼は舌打ちを一つすると、授業中にも関わらず教室を出て行った。
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