月と太陽の事件簿5/赤いランドセル
「証拠ないからって、あんな穴だらけのアリバイ堂々と話すのよ?」

舟本の態度は尊大で、挑戦的だった。

「電話してる時、部屋の窓から見えた新入生たちのランドセルが綺麗でしたなんて白々しいこと言ってさっ」

あーもう、思い出しただけで腹がたつ。

「あたしが女だからってバカにしてんのよっ」

捜査一課に配属された時あたしはずいぶん好奇な目で見られた。

殺人や強盗などの凶悪事件を担当する捜査一課にあたしみたいな若い女がいるのが珍しく思われたせいだろう。

捜査で聞き込みに行った時なんかは特にそれを感じた。

今でこそだいぶ慣れたが、当時は不快に思ったものだ。

舟本に話を訊いた時、その感覚を久々に思い出した。

「なんかあたしのことを上から下までジロジロ見てさ、気色悪いったらありゃしない」

「それは仕方ない」

達郎の言葉に、あたしは思わず立ち止まる。

「どういう意味よソレ」

返答しだいでは、ぶっ飛ばす。

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