月と太陽の事件簿5/赤いランドセル
容疑者側の視点
舟本浩和は手にしていたノートを眺めた。

そこには今朝みずからが行った復讐計画が記されていた。

誰がやったかは明らかであるが、証拠は一切残さずに教授の大事な論文に手をかける。

それが彼の理想の復讐であった。

ノートは計画の誤りを防止するために記したものである。

紙の上では完璧なはずだった。

教授の行動等を徹底的に調べあげた上での計画だった。

いったいどこから計画がずれはじめたのか。

ー論文を探すための時間を充分に考慮して忍びこんだのに、教授の帰宅が思ったより早かった。

ー破り捨てられた論文を見た教授が逆上してつかみかかってきたが、すぐに胸を押さえて倒れてしまった。

舟本は己の計画書になかったふたつの事柄を思い浮かべた。

だがしかし、それらに対して冷静に対処できたと思っている。

手袋をしていたから指紋は残していない。

ニット帽をかぶっていたから髪の毛も落としてない。

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