月と太陽の事件簿5/赤いランドセル
警察では難しい事件にあたった時、こういった民間の人間に協力を求めることがままあるらしい。

「今回のは難しい事件なんですか」

「ええ。物的証拠がなにもないものですから」

日野刑事の言葉に舟本は気をよくした。

やはり警察は事件について何ひとつ掴めていないのだ。

「そこで自分の方から舟本さんにいくつか質問をさせて頂きたいのです」

月見が口を開いた。

「質問ですか?」

「月見さんは民間人ですが、質問はすべて私がしたものと思って下さい」

日野刑事がつけたした。

つまり月見の質問にはすべて答えてくれと言いたいのだ。

「わかりました」

舟本は笑顔で応じた。

余裕がなせる業だった。

「ではまずひとつめの質問です」

月見が左の人差し指を立てた。

「舟本さんは犯行のあった時刻、通っている精神科に電話をしていたとうかがいましたが、それは確かですか」

「ええ、確かです。疑うなら先方に確認をとってもらっても構いません」

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