月と太陽の事件簿5/赤いランドセル
「TVでもそう言ってましたね」

「ですが舟本さん。これは犯人のトリックだと思うんです」

月見の言葉に、舟本は軽い動揺を覚えた。

「トリックですって?」

それを悟られないよう、舟本は意識して声を作った。

「教授の腕時計を午前7時58分にあわせた後、時計を壊してあたかも事件がその時刻に起きたようにする。これは実に単純なトリックです」

「いったい何のためにそんなことをしたんですか?」

「それは舟本さんが一番よく御存じじゃないんですか」

舟本は月見の言葉に射抜かれたような気がした。

先ほどまであった憂いを含んだ瞳はどこにもなくそこにはハッキリとした意志が浮かんでいた。

「先ほど携帯を見せていただいた時、発信履歴は午前7時58分でした。腕時計の細工をした後に、現場から精神科に電話をかける…携帯ならたやすいことですよね」

舟本は月見の瞳に、己を糾弾する強い意志をはっきりと感じ取った。

月見はなおも言葉をたたみかける。

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