月と太陽の事件簿5/赤いランドセル
「なぜ時計に細工をしたか…それは犯行があったと思われる時刻に電話をしていればアリバイになると思ったからじゃないですか?」

その通りだった。

月見は舟本が今朝、あの現場で思ったことをそっくりなぞってみせた。

自分に容疑がかかるのを避けるためにとった行動が、逆に自分を追い詰めている。

―あせるな

舟本は自分にそう言い聞かせた。

証拠はなにひとつ残してないのだ。

あせることはない。堂々としていればいい。

「創作なら面白いかもしれませんが…」

舟本は努めて冷静に言った。

あくまで主張を曲げる気はなかった。

証拠はない。

自分が認めさえしなければいいのだ。

「私が今朝、この部屋から電話をかけたのは紛れもない事実なんですよ」

「そうですね」

月見があっさり引き下がったので舟本は拍子抜けした。

この男いったい何を考えている?

「ところで舟本さん。電話をしている時、窓から入学式の光景が見えたそうですね」

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