月と太陽の事件簿5/赤いランドセル
「正確には登校する新入生たちですけどね」

部屋の窓から近くの小学校の校門が見える。

「お隣の娘さんも入学式だったようですね」

「ええ、知ってます」

隣部屋の夫婦とは面識があった。

とはいえ、近所付き合いの域を出ないものだったが。

そのことを月見に告げると、彼は小さくうなずいた。

「娘の晴れ姿を楽しみにしてるみたいでしたよ」

これは事実だった。

証言は、このことから作り出したものだった。

「では隣の娘さんが登校する姿は見ましたか」

「はい、見ました」

「後で世間話のネタにするつもりだったんですか?」

「そんなとこですね」

舟本は月見の言葉に調子をあわせていたが、なぜそんな話題を振ってくるのかと、その真意を計りかねていた。

「ではお聞きしますが娘さんのランドセルは何色でしたか」

「は?」

舟本は何を言い出したのかと思った。

「それがなんの関係があるんですか」

「別に。正直に答えて頂ければ結構です」

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