月と太陽の事件簿5/赤いランドセル
家政婦によると、教授は毎朝6時半から8時頃までの1時間半、健康のためにウォーキングをする習慣があったという。

3年前に妻を病気で亡くしてから、妻の分まで生きると健康に気をつかうようになったらしい。

「教授は殺されていたのか?」

達郎の問いかけにあたしは首を振った。

検視によると教授の遺体には外傷はなく、死因は急性心不全。

これは後に行われた司法解剖からも証明されている。

なのに単なる老人の自然死とならなかった理由。

それは遺体発見現場となった教授の書斎がひどく荒らされていたからだった。

「何者かが侵入していたって事か」

「書斎の窓ガラスが割られてカギを開けられていたわ」

「死亡推定時刻は?」

「遺体発見時刻からさかのぼって1時間前後ってとこね」

「教授の朝のスケジュールに照らし合わせると、ウォーキングからの帰宅直後に犯人と鉢合わせた可能性が高いな」

あたしたち捜査陣も達郎と同じ考えだ。

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