月と太陽の事件簿5/赤いランドセル
達郎は唇を尖らせた。

事件推理の時によくやる仕草だ。

「それならもう犯人はわかったようなもんじゃないか」

金品に手をつけず、学者の大事な論文のみに手をかける人間がどういう人間が推理せよ。

達郎はそう言いたいのだろう。

もちろんあたしたち警察だってバカじゃない。

午前中の聞き込みである男の名が浮かんだ。

容疑者の名は舟本宏和(30)。

先月まで柏木教授のもとで助手をつとめていたが先月末日付で退職。

だが辞める直前、舟本は周囲にこう話していたそうだ。

『教授に自分の研究成果を盗まれた。絶対に許さない』

「どう、あんたの思い描いた犯人像にあてはまるでしょ」

「でも捜査はそこで行き詰まった」

ぐ。あたしは言葉に詰まった。

「察しがいいわね」

「そうでなかったらオレは呼ばれないだろうからな」

サラッと言いやがったなこんにゃろめ。

でも事実だからしょうがない。

「一応ね、舟本のアリバイが成立したのよ」
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