月と太陽の事件簿5/赤いランドセル
あたしは再び手帳に目を落とした。

「犯行があったと思われる午前8時前、舟本は自宅マンションから、かかりつけの医師に電話をしていたと証言してるわ」

「なんか病気を抱えてるのか」

「大学を辞める際に心労が重なったとかで、軽いノイローゼになったそうよ」

「医師の証言はとってあるのか」

「その時刻に舟本から電話があったことは間違いないと証言してるわ」

「柏木教授の自宅から舟本のマンションまではどれくらい離れてる?」

「車で2時間はかかる距離ね。朝のラッシュを考えるともっとかかるかも」

「さっき犯行時刻は午前8時前と言ってたけど、その時刻はどこからひっぱり出してきたんだ?」

「柏木教授がしていた腕時計よ」

アナログ式の教授の腕時計はガラスが割れ、文字盤は7時58分を指して止まっていた。

犯人と争った際にどこかにぶつけて壊れたものと思われる。

犯行時刻はそこから割り出されたのだ。

「ふぅん」

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