こゆび
「ごめんなさい」

っと、深々と謝った。無言ののち

「顔を上げて、翠ちゃん」
お父さんの方が口をひらいた。

「え?」

「翠ちゃんは、何にも悪くないよ」

優しく接してくれる幸助の父に

「いや、あたしが悪いんです。あたしが、ちゃんと気をつけて渡っていれば、こんなことには」

そこで、幸助の父は指を翠の口の前にたてた

「そこまで、それ以上は言わない」

「でも」

まだ言うとしたが言葉に阻まれた。

「あいつは、翠ちゃんを護りたかっただけ、それだけだから、ね、気にしないで」

「護りたかった…」

すぐには理解できなかった翠に

「翠ちゃん、あいつが約束を破るのは嫌いなのは、知ってるよね」

翠は静かに頷いた。

「じつは、あいつと俺の間にも、ある約束があるんだよ」

「約束?」

今の状況と何の関係があるんだろ、と思い聞いた。
「あいつと俺の間で交わした約束は、あいつは、俺にどんな事があっても信じろって約束をした」

(何があっても信じろなんて幸君らしいな)


「じゃあ、おじさんも、何か約束したんですか」

翠は、不思議に聞いた。
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