こゆび
「あんた、何言ってんの、まさか幸助の事忘れようと」

「そんなんじゃないの」

蒼井の言葉に激しく拒んだ

「そんなんじゃないの…ただ…」

「ただ、何」

黙り込んでしまった

「黙ってもわからないよ、ちゃんと話して」

蒼井の言葉に軽く頷き、口をひらいた

「信じてあげたいから」

蒼井は黙っていた

「幸助を信じてあげたいから、幸助の事をわたしの前で口にしないで」

「信じてあげたいなら、よけいに幸助の事を話してないといけないんじゃないの」

理解できない蒼井は、必死に翠に詰め寄った

「それじゃあ、だめなの」
「どうして」

少し時が進み

「もし、蒼井が言った通り、幸助の事を話していると幸助が死んでしまったらって思ってしまう時があるかもしれない」

聞いてる蒼井も頷く

「それは、あるかもしれないよ」
蒼井は言った

「うん、それだったら、幸助の信じて無いことになるから」

「なんで」

「幸助は、絶対生きるって思ってるはず」

「だろうな」

そこで、ようやく蒼井は、翠の考えてる事を理解した

「そう言う事、生きるって思ってるのに、死んじゃいやってるのは、結局は信じて無いことになるの」
< 29 / 39 >

この作品をシェア

pagetop