切恋バスタイム(短編集)
 他愛のない話をしながら夕飯を終えると、順番に入浴を済ませた。「課題は?」と聞かれて、学校で終わらせてきたと答える。「いつもはやってこないのに、変なの」と言ったこいつは、俺がそうする理由を知っているから笑うんだろう。

 ――大人って、ズルくて嫌いだ。でも、早くその大人になりたいと願う自分は、焦っていてかっこ悪くて、もっと嫌いだ。



「ありがとね、片付け手伝ってくれて。」

「良いよ、別に。お邪魔してんのオレだし。」

「明日も早いし、もう寝よっか。」

「……ん、そうだな。」



 夜は短いんだから、まだ寝たくない。そんな本音を喉の奥へと抑え込んで、小さく笑ってみせる。

 ――朝なんて、来なければ良いのに。そう思えば思う程虚しくなるから、オレは諦めて、潜った布団の中で目を閉じることにした。

 明日になればまた、昼間の長さを恨めしがって、刹那的な夜を憎らしく思うんだろう。君との時間を奪う朝日が、この世で一番嫌いな筈なのに。君待ちの空を彩る星を見ても同じような気持ちになるなんて、どうしたら良いのか分からない。

 ――あぁ、夜に生きたいな。こんなことで、いちいち悩まなくても良いように。



fin.
12.06.19 奏音
書き下ろし

出演
中野容
岡本和華
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