ペトラキネシス
第5章・手掛かり
翌朝、岡崎さんが車で独身寮まで迎えに来た。
「よく寝られたか?
朝メシは食ったのか?」
まるで親のようだ。俺の両親は俺が準ミュータントだと知ると、俺に黙って引っ越してしまった。音信不通だ。世間体を気にしてのことだろう。あまり親とは仲が良かったワケでは無いから、居なくなってくれても困らないが。
今は岡崎さんが親代わりだ。警察は嫌いだが、岡崎さんは俺を[人間]として見てくれている。仕事となると非情な発言もあるが、他の警察の連中に比べれば全然マシだ。
道中、いつものようにタバコに火を着けた岡崎さんは、一口吸って吐き出す煙と同時に俺に話し掛けて来た。
「どう思う?
MDという奴を」
俺は俯きながら答える。
「頭の切れる奴だと思います。昨日の電話、俺は見事に出し抜かれましたよ。まさか奴らが複数犯だったとは…
これでMDというのが男なのか女なのか、組織の名前なのか分からなくなりました」
そう、あの屈辱…
俺は忘れてはいけない。
「だがなぁ知立、奴らがチームで挑んできているなら、俺達もチームワークで立ち向かうべきじゃ無いのか?
俺とお前、互いに足りない部分を補いながらな」