ペトラキネシス
「知立、日記だ。
見てみるか?」
岡崎さんが、赤い表紙に[Diary]と書かれた、ホコリまみれの小さな本を指差した。
2164年…
今から10年前だ。
手に取って、最後のページを読んでみた。
8月13日。
研究のためとは言え、心が痛む。遺伝子操作による人工ミュータントの作成。ひょっとして私たちは、神を冒涜する行為をしているのでは無いか?
しかし私と妻、そして助手の長男・悟で築いた研究の成果で、多くのミュータントが救われるのだ。きっと娘たちも分かってくれると思う。
愛、早紀、翠。
私の可愛い娘たち、人類の未来を頼む。
柿崎渉
「…えらくスケールの大きな話ですね、岡崎さん」
日記を閉じ、俺は内容を頭の中で整理してみた。
姉妹の両親と兄は、ミュータント能力の研究者だったのだろう。そして、その研究の被験者として娘を選んだ。
[未来を頼む]という言葉から、ミュータント能力を無効化する研究をしていた可能性は高い。
その娘たちが選んだ道が、
[復讐]か…
彼女たちの父親はミュータント能力を廃除しようといていたのに、何故あんな恐ろしい能力を?