ペトラキネシス
 
話をしている内に現場に到着し、俺と岡崎さんはMDの指定した、廃墟となった雑居ビルの前まで来ていた。

「一応ハジキは持って行くか」

岡崎さんは車のダッシュボードから拳銃を出し、弾数を確認して肩掛けのホルスターへ入れた。今時珍しい、リボルバー式拳銃。

「入るぞ」

当然、廃墟だから誰も居ない。あるのはコンクリートと思われる、ゴロゴロと転がった石の破片だ。

1階、異常なし。
2階、異常なし…
各階を確認しながら上へ進んで行く。気になったのは、上の階に進むほど石の量が多くなってきていることぐらいか。

とうとう最上階、5階。
何も無い。

「岡崎さん、MDの予告ってのは…?」

「殺人予告…いや、正確には殺人報告と言った方が正しいかもな。MDは、このビルで3人殺したから確認に来いと言ってきた」

「言ってきた?」

「タレコミ電話だ。子供に伝言を頼んで掛けてきた。ガセの確率が高いが、一応な」

そう言うと、また岡崎さんはタバコをくわえて火を着けようとした。

「ん?
ガス欠かな?」

いつまでも火が着かないライター。それを見て俺は、あることに気付く。

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