吸血鬼の花嫁
3
体が闇の中を浮遊している。
天と地の感覚がなくなったまま、どこかへと向かっていた。
突然、視界が開ける。
真っ青な空、そして見知らぬ大地が目の中に飛び込んで来た。
強く光が降り注いでいる。
その光の眩しさに、私は逃げ出したい気持ちになった。
光がひどく厭わしい。
そんな風に感じたことなんてなかったのに、今は太陽の下にいることが辛くて堪らなかった。
夢を見ているのかもしれない。
世界に現実味がなく、五感が曖昧だ。
と、視界の端に何かが揺れ動く。
青く長い髪だった。
その髪は私自身から生えているもので、ぎょっとする。
髪を掴んだ両腕は、幼さの残る男性のものだった。
…これは私の体じゃない。
ようやく、そのことに気付いた。
私の意思とは違う行動をし、違うことを考えている。
これは、ユーゼロードだ。
ユゼの記憶や心が、私に入り込んで重なっているのだ。
風が吹いて、ユゼは嫌いな晴れ渡った空を見上げた。
この、広い大地に、ただ独り。