吸血鬼の花嫁
4
「できた…!」
「おおおおお!!」
私の声に、ルーが感激した勢いで抱きついてきた。
そうして私の背をばんばんと叩く。
「い、痛いわ、ルー…」
「お疲れ、お疲れ花嫁!」
寝る間を惜しんで一週間と三日、お揃いの男女の衣装一式がなんとか完成した。
見本よりも装飾が幾分地味だが、そこは目をつむってほしい。
こんなにもリボンとレースの多い衣装を作るのは生まれて初めてだった。
私が四苦八苦していたのを知っているルーは、私よりも完成を喜んでいた。
「早く着て驚かせてやりたいけど、でも、ちょっと俺たち寝た方がいいな……」
「うん…」
私は言うまでもなく、付きっきりだったルーも疲れたような顔をしている。
特に縫いの作業に入ってから、ルーはほとんど眠っていなかった。
私の寝ている間に縫い間違えたところをやり直していたらしい。
「じゃあ…また明日…」
「あぁ、おやすみ…」
その日は夕方に寝たにも関わらず、夢も見ず眠り続け、起きたのは次の日の昼だった。
翌日。
私とルーは着替えて食堂に吸血鬼が来るのを待っていた。
ルーが家妖精に連れてくるように頼み、準備は万端である。
なかなか様になっているルーとは違い、私は飾りの多い衣装は着慣れていなかった。
自分でつくったとはいえ、似合わないと笑われたらどうしようと、少しだけ不安になる。
だけど、誰よりも一生懸命なルーのためにも、吸血鬼の喜ぶ顔が見たかった。
と、青髪の吸血鬼の存在を感知する。だんだんとこの部屋へ近づいてくるのが分かった。
そう思っているうちに扉が開かれる。
「来た!」
ルーは急いで吸血鬼の元へ駆け寄っていった。
「よお、吸血鬼。どうだこれ」
じゃーんという風に、ルーは両手を広げて見せる。
「花嫁に作ってもらったんだ。懐かしくないか。あんたが昔、人と過ごした頃の衣装だろ」
吸血鬼は表情を変えず、ルーを見下ろしていた。そして私を一瞥し、またルーに視線を向ける。
喜ぶにしては長すぎる沈黙の後、端正な眉が僅かに歪んだ。
不快さを示すかのように。