魔女の瞳Ⅴ
橋の中央付近。

車の行き交う車道の脇の歩道。

そこに男が立っていた。

二十歳くらいの青年。

黒い長袖シャツ、黒いジーンズ、短い黒髪。

上から下まで黒ずくめの男だった。

別段変わった様子のない、いたって普通の青年。

なのに。

「メグ」

修内太は警戒していた。

大したものだ。

この男の『危険さ』を肌で感じ取ったらしい。

私との修行は無駄にはなっていないようだ。

「…ふぅむ…」

私と修内太、両方を見比べながら、青年は顎の辺りを撫でる。

「さてと…魔力を感知するのは苦手でな…このでかい魔力はどっちのだ?」

こんな至近距離でも魔力の感知が出来ていないらしい。

少なくともこの男、魔術の使い手ではないようだった。

< 24 / 97 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop