魔女の瞳Ⅴ
甲高いブレーキ音を立てて停止する10トントラック。

「やっちまった！」

トラックのドライバー…四十代くらいの小太りの男性が慌てて運転席から降りてきた。

心中は察する。

人間を撥ねてしまったのだ。

まずは生死、怪我の程度を確かめ、警察と救急に連絡するのが普通だろう。

「おい兄さん、大丈夫か！おい！」

血相を変えて、倒れたままの武羅人に大声で叫ぶ男性。

…路上に倒れた武羅人は血まみれだ。

どう見ても無事には見えない。

「修内太、今のうちよ」

私は修内太の手を引いた。

「え？だって…あいつ車に撥ねられたぜ？せめて救急車くらい呼んだ方が…」

「馬鹿！」

強く手を引き、私は一刻も早くこの場から離れようとする。

修内太はあいつの切断された腕が繋がったのをもう忘れたのだろうか。

アイツは人間じゃない。

武羅人は人外、しかもとびっきり性質の悪い亜吸血種だ。

あの10トントラックが前後から武羅人を挟み撃ちにして衝突したとしても、あの男は死ぬような事はないだろう。

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