魔女の瞳Ⅴ
修内太の手を握ったまま、飛行してその場を離れる。

少々目立つけれど贅沢は言っていられなかった。

武羅人を撒く方が先だ。

「メグらしくもねぇ、何で逃げるんだよ」

憮然とした表情で言う修内太。

「闘う理由がないからよ」

私は彼と目を合わせる事なく言った。

人外というと殺し合いを好む性質と思われがちだが、どれもこれも血と殺戮に快楽を感じるという訳ではない。

そういう意味では魔女と亜吸血種は対極だ。

その戦術も、性質も、性格も。

魔術による中、長距離戦闘型、冷静に戦局を見極め、少ない労力で最大の効果を挙げるのが私達魔女のやり方。

肉弾戦による近接戦闘型、本能とその場の判断で行動し、目に映る敵は殲滅させるのが亜吸血種。

本能で動く亜吸血種…特にケダモノ丸出しのあの武羅人とまともに張り合うなんて、ナンセンスもいい所だ。

正当な理由があったとしても御免こうむりたい。

「そういう訳よ。時には逃げる方が最良の策って事もあるの。覚えておきなさい」

私は修内太に言い聞かせた。

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