スノウ
「何するのよ!!」

思い切り慧の顔を引っ叩く。


「こんな物持ってても意味ないだろ。あんた愛人にでも成り下がるつもりなの。」

悪びれる様子もなく慧は言い放った。


「あんなもん、何の価値もないだろ。弁償しろって言うならするし。」

頭の中がぐちゃぐちゃだ。綺麗な雪景色など一瞬で吹き飛んだ。

「あなたが弁償できるような代物じゃない!」

慧はくすくすと笑って言った。

「ほら、もう観覧車降りなきゃ」

観覧車のドアが開いて降りるよう係員に促され降りる。

「記念写真いかがですか?」

慧はポケットをゴソゴソと探し始めたが、私は慧を置いて歩き出した。

人の物を勝手に捨てて正しいことのように言う慧。私は慧を好きになれないと思った。

「待てよ!」

慧は走ってエレベーターを待つ私のもとへ走ってきた。

無視してエレベーターへ乗り込む。

エレベーターの中でも慧は悪びれもせずに話しかけてくる。

「ミチルはね、青い鳥をまだ見つけられない。」


「だったら何」
なんで私もいちいち反応してしまうんだろう。

エレベーターが一階に着いて、私は早歩きで歩き出す。

後ろをついて歩く慧が言った。

「ついて来い!」

慧は駆け出して私の手を掴んだまま走り出した。
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