スノウ
「小さいときから貧乏だったから、家が貧しいと笑った奴等を見返したかった。僕は普通の人より要領がよかったし、できない事のほうが少ないと思う。だけど」
深く深呼吸して隼人が言った。
「…人より豊かに暮らしたい、高いところからものを見たいと思っているうちに、俺の大事なものはみちるじゃなくて自分が偉くなることになってたんだなあ。」
今まで見たことのない隼人の涙。
「でも、生き方は変えられない。一番大切なものがみちるではないんだよな。俺は政略結婚するのにスペインに来いだなんておかしいな。」
「うん。そうだよ。それでも隼人は私の大切な人には変わりない。いつまでもね。この先老化で劣化していくお互いの姿を見ずにすむんだもん。」
鼻をすすりながら隼人が笑った。
「そこまで自己分析しても隼人は結婚するの。」
涙をぬぐって隼人が言った。
「うん。俺も、彼女もこういう生き方しかできないんだ。」
彼女って言った。
隼人が私ではない人を。
ひどく胸をしめつける。
「さようなら、隼人」
手を差し出す。
「5年間ありがとう、みちる。」
差し出した手を引き寄せてぎゅうっと抱き寄せられた。
抱き合って泣いた。
声をあげて子供のようにわんわん泣いた。
明るくなるまで泣いて、昔話をした。
大学に入って隼人と知り合ったときから、今日までのことを。
振り返って思い出話をしながら、今日という日を境に隼人とわたしは完全に、この先繋がることのない別々の道を歩き始めるのだと思った。
と同時に、隼人のこんな泣き顔を見たのは後にも先にも私しかいないだろう。
結局、隼人は私を愛してはいないけれど、初めて私が愛していると思えた人で、5年の間も隣にいさせてくれたのだからそれでいい。
深く深呼吸して隼人が言った。
「…人より豊かに暮らしたい、高いところからものを見たいと思っているうちに、俺の大事なものはみちるじゃなくて自分が偉くなることになってたんだなあ。」
今まで見たことのない隼人の涙。
「でも、生き方は変えられない。一番大切なものがみちるではないんだよな。俺は政略結婚するのにスペインに来いだなんておかしいな。」
「うん。そうだよ。それでも隼人は私の大切な人には変わりない。いつまでもね。この先老化で劣化していくお互いの姿を見ずにすむんだもん。」
鼻をすすりながら隼人が笑った。
「そこまで自己分析しても隼人は結婚するの。」
涙をぬぐって隼人が言った。
「うん。俺も、彼女もこういう生き方しかできないんだ。」
彼女って言った。
隼人が私ではない人を。
ひどく胸をしめつける。
「さようなら、隼人」
手を差し出す。
「5年間ありがとう、みちる。」
差し出した手を引き寄せてぎゅうっと抱き寄せられた。
抱き合って泣いた。
声をあげて子供のようにわんわん泣いた。
明るくなるまで泣いて、昔話をした。
大学に入って隼人と知り合ったときから、今日までのことを。
振り返って思い出話をしながら、今日という日を境に隼人とわたしは完全に、この先繋がることのない別々の道を歩き始めるのだと思った。
と同時に、隼人のこんな泣き顔を見たのは後にも先にも私しかいないだろう。
結局、隼人は私を愛してはいないけれど、初めて私が愛していると思えた人で、5年の間も隣にいさせてくれたのだからそれでいい。