スノウ

大通公園

隼人からの手紙を読み終えて、ため息をつく。

何もしたくなかった。
ベッドへ身を投げ出して天井を仰ぐ。

こんなに空っぽで寂しいのに、時間がたてばお腹が空く。
食べたい気分じゃないのに空腹はやってくるし、トイレにも行きたくなる。
人間って哀しい生き物だろう。
動物なら、こんな面倒な気持ちを抱えることもないのに。なんて私は身勝手で面倒な生き物だろうか。

冷蔵庫を開ける。
空っぽだった。
ここ数日、ろくに買い物にも出かけなかったのだから食材があるわけもなかった。

シャワーに入って、身支度を済ませて外へ出た。

晴れていても外はしっかり冬だった。
窓から見る限り温かい日差しが降り注いでいても、外へ出れば白い息が上がっては消えていく。


タートルのセーターとスキニーをムートンのレースアップのブーツにレザーのショートジャケットにマフラーに昼間の雪景色はまぶしいので大きなサングラス。


女らしい格好が好きだった隼人の好みとはまるで逆の格好で大通を歩く。

美味しいと評判のワンコインで食べられるカツどん屋へ向かった。
お店の造りは狭くてきゅうくつだが、何故か無性に食べたくなるほど美味しいのだ。

高カロリーでエネルギーをつけようだなんて安易な発想だけど、それしか思い浮かばなかった。

ガラガラっと店の戸を空け、券売機で食券を買い、カウンターのおばさんへ渡す。
お水をセルフサービスで入れて、目の前で一生懸命働くおばさんを見つめる。

汗を流しながら一生懸命かつ丼を作る様は何度見ても飽きることはなかった。

ガラガラッと店の戸が開く。

「おばさーん!大盛りね~」

大声を張り上げなくても聞こえるのに。
威勢のいい若者と思いきや


慧だった。

「あっ、青い鳥ちゃん」

< 21 / 33 >

この作品をシェア

pagetop