スノウ
夕方6時。
もう外は真っ暗だった。
大通公園はイルミネーションで今日もきれいだ。

「みちる〜。」

慧は口元までぐるぐるにマフラーを巻いて走ってくる。

「慧って有名なの?」

慧は吹き出して言った。

「中途半端にね。」

わたしは慧のことを何も知らない。

「今日は驚くよ。早く!走って!」

いたずらっ子の顔をして私の手を引いて走る。

どうやら慧は走るのが好きらしい。

慧の車に乗り込むとそれはびっくりする光景だった。

「ネコ?」

慧は頷いて言った。
家のそばにいたから拾ったのだと。

「迷子だったらどうするの?」

「オレに拾われたらもう迷子ではないよ。うちの子」

そう言って慧の車は走り出す。
小さな真っ黒の子猫。
お腹だけ真っ白なふかふかの子。

抱っこしてあげると小さく丸まって目を閉じている。

慧は信号が赤になって車が止まるたびに子猫を見つめて目を細めている。

「かわいいね。慧に似合わないけど。」



慧はにんまりしながら口を開いた。


「この子はチルチルだから」
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