スノウ

観覧車

「ちょっと!!!!」

慣れない高いヒールは足が痛むし、走らされるなんて。
涙は止まったがとにかく足が痛い。

手を振りほどこうと思っても、力が強すぎて離せない。

「ヒールが痛いの!」

大声で言うと男は走るのをやめた。


「なんなのよもう!」

そう言った瞬間、男は私の視界から消え、と同時に私は宙へ浮いた。




「キャー!!!!!」




今度は私を肩車して走り出す。



「こわいこわいこわい~!!!!!」


道行く人は不思議そうな顔をして私たちを見た。

冬の駅前通を肩車で走る私たちはおかしいに違いない。

走ること5分、とあるファッションビルと観覧車が一緒になったビルへ辿り着いた。


「ここ、3時まで観覧車乗れるんだよね。」

そう言って私を肩車から下ろし、エレベーターへ押し込んだ。

「突然何?っていうかあなた誰?」

そう言って睨み付けると


「赤沢慧。あ・か・ざ・わ・け・い」

私の鼻先に鼻先をつけて言った。


「ギャッ!」


突き飛ばした瞬間、エレベーターのドアが開き、慧は床へ転がった。

エレベーターを待っていたカップルが怪訝そうな顔で私たちを見る。

仕方なく手を引いて起こしてあげると慧は満面の笑みで礼を言い、観覧車へ向かっていく。
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