となりの野獣
それは悠久の時を生きた俺には悲しくもあり、嬉しくもある。

どちらかというと、ジャムにされるというあっけない最後に情けない気持ちで一杯。

しかし、死んでいないところを見ると、ひょっとしたら、人間に戻れないだけなのかもしれない。

人間に戻ることはもうすでに諦めている。
人間は結局のところ外見だと悟ってしまったのだ。


「すみません。切り花だったのすぐに悪くなるよりは、と作ってみたんですけど…。
お気に召しませんでした?
…引っ越し前に引き止められた方からいただいたのも混ざっていますが」


愛おしむようにその瓶の蓋を撫でる。
その若さにして思われる人がいるのは俺としてはうらやましかったが、
その微笑ましい様子に不思議と妬ましさは沸かなかった。


「帰ってきて扉を開けると、部屋一杯の薔薇と壁一杯の行かないでの文字…
一体どなたからだったのかしら」


それは怖い…。
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