となりの野獣
身上話の野獣
むかしむかし、あるところに、
とてもおくびょうな王子がおりました。

ある晩、遊びに来た友人をいつものように隠れてやりすごすと、
またたく間に友人はうるわしい女神へと変貌してこう言ったのです。


「お前はなんと臆病で卑怯な心を持った人間だろう。
その身を小さくし、いつまでも怯えているがいい…。」


王子はみるみるうちに小さく貧弱な獣へと変わってしまったのでした。




「いつものように、友人から逃げているんですか…」

「ええ…まあ…」

「あれ、期間とかつけられませんでした?」

「キゲン…?」

「この薔薇が枯れるまでにーとか」

「いや…急に周りが大きくなってしまったもので、驚いて逃げてそれっきりだよ」

「ああ…そう」

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