となりの野獣
はたらく野獣
俺は藁にもすがる思いで承諾した。

他の二人もそれに従う…かのように思えたが、実際はそうでもなかった。


ジュリアはさすがに下を履いていたが、気を抜くと男女構わず絡む。
ライアンは開店と同時に二回に引きこもっている。

俺の方もうまくいかなかった。

少し顔を出すと子どもが泣き、大人の顔が引きつる。
せめて、皿洗いでも、と物陰で皿を掴むと力の加減が分からず割ってしまう。


「思いのほか使えませんね」


料理だけでなく、給仕や非常識な客払いまでもこなしたローズがため息をついた。

昼食時が過ぎ、ようやく客足が途絶えた頃だった。
ありあわせとは思えない出来の昼飯を前にして喉が詰まる。


「すみません…
客払いはローズさんがやった方が喜ばれるかと…」


俺はおずおずと口を開く。

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