となりの野獣
歳は10くらいだろうか。
幼いながらもしっかりした物言い。

さらりとした辛口に傷ついたが、俺は少女を率直な人物だと判断した。

俺の姿はある女神によって、数百年前に牙のはみ出て鼻の潰れた醜い獣、オークにされてしまったのだ。


「…ローズさんはどうしてこんなところにお住まいになろうと?」


数年は人里離れた屋敷に隠れ住んでいたが、元人間で世間知らずの王子だった俺はすぐに寂しさと不便な暮らしに飽いて、ある村のはずれに住み着いた。

皆は人語を使う俺を獣人や山男の類として恐る恐る接して、追い出そうとはしなかった。
が、会話もできなかった。

その久しぶりの人間との会話は嬉しくもあり、怖くもあった。


「ここで、オーガニック創作料理の店を開こうと思いまして」


その若さで…?
と、聞こうとした時。

うさぎの足がひくひくと動く。

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