となりの野獣
この娘の一言で路頭に迷うことになるのだ。

実際、ローズに踏みにじられた客はとても幸せそうだった。
あのローズファンクラブの一人でローズから何らかの罰を受けるために食い逃げしたようにすら見えた。


「すまぬ…
これから頑張るから、野獣殿を叱らないでくれ…」


潔く謝るライアンの服は、100%その食い逃げ犯のものに変わっている。
そのお揃いのTシャツは「一輪の薔薇亭」と書かれている以外は解読不能だった。

もう一人、その集団の中に角砂糖を一瓶分大量消費した者もいたが、ローズは哀れみの目を向けただ微笑んだだけで済ませた。
それだけでも効果的だったようだが。


「私も…野獣様ひとすじでいくわ」


あまり嬉しくないジュリアの決心だ。


「…まあ、初めての労働はそういうものですわね。
私もそういう経験はありましたし」


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