となりの野獣
一体それが何年前の話なのか、怖くて聞けなかった。


「分かったら野獣さん(様)(殿)は二階でくつろいでください」

「…はい。」


俺は全くの厄介者扱いにひげの先までうなだれる。
二階のソファで丸くなり、太い尾をパタパタと揺らしてみるとヒモにでもなった気分だった。

二度、充電と称し、ジュリアがあらぬところを触りにきた。
ローズが呼び戻す前に戻るところを見ると、それなりに頑張っているようだ。

二度、駆け上ってきた音がしたが、半ば程で思い直したように降りていった。
対人恐怖症のライアンは己と戦っているのだろう。


今日はいろいろありすぎた。

住む場所もなくなり、
命に等しい薔薇も失い、
職も失った。

それは、獣になった日のように突然のこと。

しかし、あの時とは違い、今は支えてくれる者がいる。
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