となりの野獣
ひどく頼りなく、俺を人間にする程の力もない僅かなものだが。


信じても良いのだろうか
その好意に甘えてしまって良いのだろうか


自覚はしていなかったが、久しぶりの人との関わりに俺は緊張していたのだろう。

ぱさっ

不意に、布団を直されて身構える。
いつの間にか、うとうと微睡んでいたらしい。


「あら、起こしてしまいました?
良いんですよ。寝ていてください」


その肩を、優しく引き戻される。


「でも…俺だけ寝ていたのでは申し訳ない」


まだ、寝起きでろれつの回らない舌を動かす。
頭も動いていないのか、つい弱音が出てしまう。

顔を覆う肉厚な俺の腕を、細い指が優しくなだめるように撫でる。

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