となりの野獣
俺の思惑に気づいているのか。

ローズは寝癖を整えるように俺の毛並みを撫でつける。
その冷たい感触が心地よい。


「言ったでしょう?
とっても幸せな気分になるかもしれませんよ、と」

「?」


首もとを猫にするようにくすぐったその手から、ふわと花の香りがする。


「薔薇!!あの薔薇のジャムか!!
しかし、俺は食べていないはず…」

「あら、でも、バラのジャムを入れた紅茶は朝ごはん前に召し上がっていましたよ」


飛び起きた俺に事も無げに返すローズ。

いつの間にか一服盛られていたのか。
油断ならない…


俺がやっていてあいつらがやっていない事。
思い返すと、人化する兎と斧を発見したのは、確かに紅茶を飲んでからだった。


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