となりの野獣
「あら、ちょっと絞めが足りなかったかしら。
最初は鶏にしようとしたんですけど、
この通り、簡単にちぎれちゃいまして。

ちょっと待っててください」


言って後ろを向く隣人を、必死で止めた。

「いやいや、大丈夫です。こちらでなんとかしますんで」


思わず触れた背中は華奢で、その癖のない肩より少し長めの黒髪はなめらかに滑った。

あまりの心地よさに手を引っ込める。


「あらあ、そうですか?では」


にっこりと悪魔の笑みを浮かべ、隣人は少し血のついた薄茶色のうさぎを手渡す。

まだ温かい…。

木を切って薪にして売っている俺にはそのうさぎを殺して食べることはできそうにない。

因みに、自給自足生活はすでに挫折し、財産も獣にされて100年程で底を尽きた。


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