となりの野獣
「私のことはローズとお呼びください。では、失礼します」


言って、彼女は蹴破られた窓から出て行った。

なんと、非常識で暴力的な女が越してきたのだろう。

散乱したガラスを片付けながら、俺は身震いした。

肉厚で綿毛のような耳毛の生えた耳はすっかり後ろを向き、するりと長い褐色の尾は警戒にピンと立ちっぱなしだった。

まあ、野獣の隣に住める人物はあのような者でしかありえない。

野獣はため息をついて、自分から関わるのはやめようと思った。




ただ一つ、喜ぶべきことがあった。

手加減したのであろう、ローズの首絞めが幸いして、うさぎが息を吹き返したのである。

夜中にうなされて手足を必死に動かしていること以外は後遺症も全くない様子である。

俺はこの小さなかわいい生存者を久しぶりの同居人にした。
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