となりの野獣
口では言ったものの、この屋敷を一人で片付けるには普通の状態であっても3日はかかる。

何百年もの汚れを取るとなっては一週間以上かかるだろう。

俺はその提案はきっと社交辞令なのだと言い聞かせ、置かれた鍋に目をやる。


「ところで、それは…?」


それは非常に良い匂いを発していて、俺の鼻がひくひくと動くのを止められなかった。


「チキンカレーです。作りすぎてしまったのでどうぞ。」


事も無げに言うローズだったが、俺はすっかり食欲をなくした。

瞳孔が恐怖に広がり、視野がはっきりとする。

カレーという刺激物なだけに、何を混ぜられていても分からない。


「…それ…昼間引きちぎった鶏ですか」

「そうです。私、街では見習いの料理士をしていたので、味には自信あるんですよ」
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