勝手にハニーキス



静奈の体を自分の方へ強引に向けたのは、拓斗の手。



その細い手にそんな力があったのかと思うぐらいの力強い手。



それでも……そこから視線を外す事の出来ない静奈。



センパイの隣で腕を絡ませる……見た事の無い綺麗な女の人。



拓斗の事、断ったのに……それなのに見てしまった。



小さく震える静奈の体をそっと引き寄せると、拓斗は耳元で呟く。



「見たくない姿なんだろ?だったら見るなよ。一生蓋をして生きていけよ」



「…………」



センパイが消えていこうとする方向と逆に背中を押して、帰ろうとする拓斗の手を静奈は思わず振りほどいた。



< 79 / 92 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop