不思議な喫茶店
それから小春日和な日が続いた。

太陽が出ている間はポカポカと暖かいが、陰てしまうとだんだん寒くなる。

風も北風で冷たくなってきた。

そんなある日、2週間ぶりに雨が降った。

やはり暇だ。

まだ一組も来ていない。

雨の勢いは強く朝から土砂降りだった。

雷が鳴ってもおかしくないほどで、停電しても良いように懐中電灯の用意もした。

昼を少し過ぎた頃ドアベルが鳴った。

ようやく一組目の客だ。

入り口で傘を畳み、ドアの横の傘立てに置いて溜め息を吐いた。

その人は先日の喪服の男だった。

どういう訳か今回も喪服を着ていた。

客がいない店内を見渡すと、また前と同じ席に座った。

そして、オーダーも前と同じだった。

濃いめのホットコーヒーと、とびきり甘いミルクティー。

店内には小さくジャズが流れていたが、話し声や食事の音がない分、調理している音が大きく聞こえる。

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