5分100円 コインランドリー

2.乾燥機のリング

乾燥機を使う人はさまざまだ。
近所のおばさんから、若いひとり暮らしの男性、同棲してるカップルと、最近結婚した若い奥様までいる。
ゲイの順ちゃんは、いつものように乾燥機から取り出した洗濯物を綺麗に畳んでいる。
「あら。瑛子おひさじゃない?」
完全におねえ言葉。
心は乙女。
見た感じは、若干男性が残っている。
このことは、絶対に言ってはいけない。
かなり、怒るはず。

そこへ、隣に住む飯野さんのおばさんが声を掛けてくれた。

早くに旦那さんに先立たれて、今は一人で暮らしている。

たまに、多く作りすぎたおかずを持ってきてくれるのだ。

「瑛子ちゃん、今日は雨だから混んでるね。これ、今晩にでも、あっためて食べてね。」

今日は、煮物とスープを持ってきてくれたのだ。

「いつも、すみません。助かります。」

「そうだ知ってる?瑛子ちゃん。」
噂好きの、飯野さん。少し会話は避けたいが、おいしいおかずには勝てない。

「なんですか?」

「ウメさん、旦那さんあんまり具合が良くないらしいのよ。それで、お孫さんが戻ってくるみたいよ。大変よね。お金持ちも・・・。」


だから、ウメさんは、孫を気にしていたのだ。




両親を無くして5年経ち、寂しさは無くなった。
その代わり、周りの人の温かさが身にしみるようになった。


今日は、一日雨のせいか混んでいる。

私は、ランドリーの端っこで、お気に入りの椅子に腰を掛け、雑誌を読んでいた。

しばらくして、ランドリーには、乾燥を終えた人が次々と家に帰っていくようだ。

波が引いたようにランドリーには人が居なくなった。

瑛子は、立ち上がり空いたランドリーの中を覗きこんだ。

ランドリーの中に忘れ物が無いか確かめる。

「あれ?」
指に触れるものがあった。

「なにこれ?」
取り出してみると、シルバーの指輪だった。

たしか、ここを使っていたのは、若い男性だったはず・・・。
しかも、若いのに珍しく、使い方がよく分かっていなくて何度も教えた。

「よし。今度来た時に確認してみるかな。」

リングをエプロンのポケットに、そっと入れた。




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