5分100円 コインランドリー
今日は、3日久しぶりに晴れた。

裏の森には、多くの鳥がさえずり、久しぶりの晴れ間を喜んでいるようだ。
さわやかな風が頬を横切った。緑のいい香りがする。
森の木々は、ザザザっと音をたてて揺れている。

「今日は、きっと誰も来ないかな。」
空を見あげた。

私は、いつもより入念に掃除を始めることにした。

早速、乾燥機の中を雑巾で拭いた。

ピカピカに綺麗になる。

気分がいい。

モップで床を拭く。

念入りに念入りに・・・。

母親に、毎日のように掃除をするように言われた。

「瑛子。掃除は、心を綺麗にするのよ。」

母の口癖。

面倒くさがりな私は、嫌々だった。
 
最近、分かるようになった。

綺麗になるのは、気分も良くなる。すっきりした。

掃除に熱中しすぎて、周りが見えなかった。

いつの間にか店内に人がいた。

乾燥機の前に立つ、若い男性に気が付きビックっと体が震えた。

「すみあせん。脅かすつもりは無かったんですけど・・・。あの・・・。」
ばつが悪そうに、彼は言った。いい人な雰囲気がする。

私は、顔を上げて微笑んだ。
ナンパ?・・・ではなさそうな表情だ。

「なんでしょうか?」

言ったと同時に、この間の忘れ物が頭をよぎった。

そうだ。

あっ。

「指輪。」

「指輪。」

二人同時に発した言葉が一緒で、お互い噴出してしまった。

どうやら、話を聞くと、最近彼女と一緒に住み始めたらしい。
同棲中。
うらやましい限りだ。

彼女と一緒のペアリングを無くして焦ったようだ。

「はい。これ。今度は無くさないようにね。」

彼に手渡した。彼は、喜んだ表情で言った。

「ありがとうございます。」

幸せそうな彼に少し嫉妬した。

彼女はどんな人なのだろう。

彼の笑顔に、心がぎゅと掴まれた気がした。



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