【完】約束=願い事
彼は少し照れて
そして、なぜだか少し悲しそうに見えた。
激しく鳴り響いていた心音は、
その表情にさらに心を奪われて
逆におとなしく落ち着いてくる。
「ねぇ、願い事は?」
わたしの内心に気付くはずもなくて、
照は、こんな時にもいつもの台詞を口にした。
「夢瞳の誕生日だからね。
本当にどんな願いだって聞くよ?」
少し遠ざかって
不安になるくらいに特別優しく問いかける彼は、
わたしに答えを求める。
まだ定まらない願い事。
でも、
「わたしはね。
あなたの願い事を聞いてから言うって決めているの」
それだけは最初から決めていた事。
「照は?願い事」
「オレは決まってるよ」
決まってる。
願い事が?
それはとても意外で、
たったそれだけの言葉にとても心が動いた。
「いつ、から…?」
「もうずっと前から、だよ」
「何?ナニナニ?教えてよ」
ドキドキしていた心臓は、違う好奇心を見つけてまた高鳴り始める。
ずっと聞きたかった願い事。
もうずっと前から決まっていたなんて。
彼の願いは、どんなことなんだろう。