【完】約束=願い事

「実は圭織さんは古い知り合いでね。
といっても私が幼い頃だ。
今の君くらいの年齢だろう。
父同士が知り合いでね。
3つ年上の彼女は、わたしの憧れの存在だった。淑やかで、笑顔が良く似合う人だったよ。
違いはもちろんたくさんある。
でも君は、お母様にとても似ているよ」

そう言って、わたしのことをとても優しく見る。



初めて聞く母の話。

全く知らなかった父と出会うまでの母。
母の家族。



「だから……わたしを引き取ろうと思ったんですか?」



驚いた。

早く続きを、いきさつを。


逸る気持ちで、聞かずにはいられなかった。



「それが理由じゃない、と言えば嘘になる。
理由のひとつではあるよ」

きっぱりと言ってくれる答え。



それは灰色な部分が無くて、嘘が無く聞こえた。




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