【完】約束=願い事

数週間前、
身体にたくさんの傷をつくった咲楽が入所してきた。


まだ寒い時期なのにボロボロの服を着せられていた。

薄汚れて、ひどく震えていたのがまだ記憶に浅い。




経緯は知らないけど祖母からの虐待だと聞いた。

両親は幼い彼を残して蒸発したのだという。



似た境遇の子供ばかりで
驚くことはもうなくなったけど、
子供に深い傷を残す大人が大嫌いだ。


誰かがひどい状況で入所する度に思う。






「今日はお休みするの」

あどけない声で咲楽が言う。



「また休むの?」


心身共に傷が癒えきらない咲楽は、
今でもまだ何かと学校を休みがちだ。


「行けるときに行っておかないと
しっかり勉強できないよ」

咲楽の為なのに

そう言うと
泣きそうな顔になる。




イジめたいわけじゃないんだけどなぁ。





「お兄ちゃんと…病院に行くの」


「病院?」


あぁ。
そか。今日は金曜日。

『病院の日』だ。



施設では週に一度、
医師に診せる必要がある子たちをを集めて
市立病院に連れて行くことになっている。

外傷は勿論、
心の傷を治すためにも病院通いは重要らしい。



「ちゃんと診てもらうんだよ。
で、お兄ちゃんって?」


最年少の6歳の咲楽からしてみれば、
ここに居る誰もが
『お兄ちゃん』で『お姉ちゃん』だ。



「お兄ちゃん。
照(ショウ)お兄ちゃん」


照…?


あぁ。
何日か前に来た男の子がいたわねぇ


「そ。じゃあ。
お兄ちゃんと仲良くね」


なぜか、わたしになつく咲楽に
ちょっと冷たかったかなって思わなくはないけど、


結局助けてあげれないわたしが
不必要に優しくするのは逆に酷だ。


だから短く別れを告げて
、学校へ向かう。


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