【完】約束=願い事
美しい緩やかな黒髪がふわりと揺れて振り向いた。
「照」
悲しげに呟く彼女は複雑な表情をしている。
でも少し動揺したその瞳は、やはり冷静な色を称えていた。
なのに、君に見つめられるとオレは罪悪感でいっぱいになった。
いたたまれない気持ちで視線を地面に落とす。
「ごめんなさい。
わたし聞いてしまったわ、あなたの話」
もう一度視線を戻す前に、君が謝る。
「でも、安心して。
あなたの願い事と一緒に、今のことも忘れてあげる。
約束は、守るタイプなの」
そんな言葉に視線を戻すと。
「夢瞳……!」
毎晩会っていた君は、君の名前通りに、いつも夢見る瞳で話してくれた。
その夢を見て輝く瞳は今、初めて見る涙に濡れていた。
この涙はオレが流させているのか?
出会った頃から毎日元気になっていった君を突き落としたのはオレ?
少し微笑みながら泣く君。
抱きしめたい。
細い肩を抱いて、柔らかな髪を撫でて。
『忘れなくて良いよ、オレが君を守るから』
そう言ってしまいたい。