【完】約束=願い事
穏やかな川の流れの様な印象の背が高い少年だった。
施設という名の村に入ってきた新参者。
「あなた確か…照?」
「そうだよ。
君が、夢瞳だね」
?
「そうだけど、なんでわたしの名前を?」
「咲楽に聞いたよ。
病院に行く時一緒でね」
微笑む彼は、
どこか少し頼りなげで、
夜に紛れてしまいそうな、
そんな気がした。
照は記憶がないのだと施設長が話していた。
倒れていたのを保護されたのだという。
身元を表すものが何もなく、捜索願いも出されていない。
倒れていた原因も不明。
今まで生きてきた記憶がないだなんて、どんな気分なのだろう?
「あなた、記憶がないの?」
他人に興味を示さないわたしが、
自分でも珍しいと思う。
不躾だと分かっていても、どうしてだか聞かずにいられなかった。
暗闇に溶け込んでしまいそうだけど、
澄んだ青空みたいな穏やかな目の彼が、
どこか自分と対照的に見えたから。
「うん」
照は頷く。
嫌な顔ひとつせずに。