【完】約束=願い事
現行犯で嘘を吐く気も失せたから、
仕方ないし、口を割ることにした。
「お金を貯めてるの」
「お金を?何かほしいの?」
「違うわ。
わたし早くここを出たいの。
将来のためよ」
「将来…?」
意外そうに彼は目を見開いた。
「そんなことを考えるんだ?
夢瞳は何歳だっけ?」
「14歳」
「14……」
「でももうすぐ15よ。
ねぇあなたは、わたしが遊びたいから抜け出してると思った?」
今日のわたしは饒舌みたい。
学校でも施設でもほとんど誰とも接触しないから
久しぶりに同じ年頃の誰かと話したからかな。
「正直ね。
でも、違うみたいだ。
大人なのは顔と服装だけじゃないんだね」
今度はわたしが驚く番だ。
ほんの数瞬の間に、
随分と落ち着いた声を出すから。
「あなたは……何歳?」
「17」
きっぱりと区切ったあとに、
「…だと思う」
と付け加えた。
続けて顔をしかめて、少し頭を振る照。
え。
痛いの? 頭?
そういえば、
記憶喪失の人は無理に思い出そうとすると、
激痛が走るって何かの本で読んだことがある。
どうしよう。
倒れてしまったら。
わたしは慌てて彼を掴んだ。
「照!ねぇ!わたしを見て!
痛むの?」
「夢瞳…」
すると、そっと顔が上がった。