【完】約束=願い事
その記憶
水の匂いが強くなる夏の初め。
照との約束の日課は続いた。
いつの間にか1ヶ月になりそうだ。
もうすっかり売春はしなくなった。
どのオヤジから貰った物かさえ忘れた携帯電話も、
ベッドの下で電源が切れたまま。
相変わらず照の記憶は戻らくて、
まだ毎日病院に通っている。
そんなに何を診ることがあるのかは分からないが
稀なケースでカウンセリングを行っているという。
早く記憶を取り戻して、
たまに見せる寂しげな、苦しげな表情を取り除いてあげたい様な、
まだ治らないで照の時間を独り占めしていたい様な、
複雑な気分。